saludos60のブログ

ついに60代になりました。いいことも悪いことも一日一日を楽しんで暮らしています。

サリーの耳鳴りの話2 -黒い訪問者

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青い空の小さな町。

耳鳴りがすると、何かが起こる、という、ある少女のお話です。

 

 

ああ頭が痛い!

サリーは、痛みで目が覚めました。ベッドから起き上がるのもやっと。

それでも、何とか支度をして、学校へ。今日はテストもあるのです。

バス停のそばに、杏子の木がありました。サリーは、この場所が好きでした。

いつも、一人ぼっちの時、この木の木陰でこっそり泣くこともありました。

 

ところが、今日は、それどころではなく、とても頭が痛かったのです。

スクールバスの、一番後ろの特等席に何とか腰を下ろしました。

みんな、大きなあくびをして、とても眠そうな顔をしています。

バスがガタガタ揺れ、今度はサリーの顔の右側で、耳鳴りが音を立て始めました。

 

ズン、ズン、ギー、ギー、ギー。

耳が、ちぎれるような音。

痛さを忘れようと、ふと、窓の外の景色を見ました。

いつもの景色。美しい森が広がっています。

 

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なにかな、あれ?

 

何か、見たこともない小さな生きものが、動いているのが見えました。

木の間に隠れながら、こちらの様子をうかがっているようにも見えます。

黒くて雪だるまのように丸くて、すばしっこい小さな動物にも見えました。

ただし、足も手もありません。自由に動く丸い形のもの。

 

いったいなに?だれ????

 

思わず声を出してしまい、隣の子がいぶかしそうにサリーを見てきました。

すると、耳元で、ささやくような声が。

 

ーやあ、やっときみを見つけることができたな。

 

とつぜん、

キーーーーーーン 右耳が破裂しそうに。

 

イターーーィ!

 

サリーは思わず目をつぶってしまいました。

 

 

一瞬の時間の闇が。

一瞬、ほんの一瞬です。

 

 

目を開けると、さっき見た黒い雪だるまが、サリーの横に座っています。

はじめは、びっくりしましたが、なぜかまったく怖くはありません。

黒い雪だるまは、優しそうな眼をしていたんです。

 

ーあなたは誰なの?

 

心の中でつぶやきました。

 

ーこわがらせて悪かったね。わたしは、ずっとずーと先、200年以上も、先の者だ。

ちょっと用事があってね、いろいろな時代をさかのぼっているんだ。

きみのようなエネルギーの光をだす、生き物を探している。

 

ーえ、私に?なんの御用なんですか?

わたしは、エネルギーなんか、持ってないですけど。。。

人違いではないですか?

 

ーいや、きみはちゃんとリストに載っているんだよ。

実は、少しわたしに、力を貸してほしいんだ。

 

そういうと、黒い雪だるまは、突然消えてしまいました。

その直後、またキーンキーンと耳鳴りが。

 

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スクールバスは、子供たちを乗せたまま、急カーブを曲がり、山を登っていきます。

いつもの道と違います。子供たちはみなスヤスヤと眠ってしまっています。

 

山をグングン登って、バスはついに頂上に停まりました。

窓の外には、さっきの黒い雪だるまが、立っていました。

 

ーまただ、また不思議なところに来てしまった。

 

サリーは、何がこれから起こるのかと、少し心配になっていました。

 

ーここは、我々の時代だよ。

 

頭の中に、声が聞こえてきました。

 

ーよく見てごらん。きみたちの時代とは全然違うだろ?

 

声は、すべて頭の中に聞こえてきます。

 

ー我々は、マインドと呼ばれる生き物なんだ。マインドはすべて心で会話する。

やはりきみには、通じるね。さ、きてごらん。

 

サリーは、黒いマインドと一緒に、山の頂に登っていきました。

見渡す景色は、一面、真っ赤です。

焼けたようなにおいも漂っています。

空も山も海も、みな赤い。

何で、こんなに赤いのかな。

赤い国。すべてが終わっている。

そんな風にもみえました。

いくつかの、マインドらしきものが、空間を飛び回っています。

あ、あそこ?

大好きな杏子の木があった野原。

サリーの家も、あのあたり。

とっくに燃えたのか、もうなにもありません。

 

ー実は、もう、悲しいけど限界なんだよ。

もはや、我々の時代は、終わりを迎えるだろうな。

大地も空気も汚れ、腐り、食べるものも住むところもない。

それに、競争や奪い合いで、あっちでもこっちでも戦いが起きて

みんな滅んでしまったんだ。

マインドは、人間が進化した生き物だが、生き残るために優しい心なんか

なくなっちまったんだろうな。

悲しい未来を、聞かせてしまったね。。。。

 

黒いマインドは、悲しそうにうつむいていました。

 

いよいよ、サリーの耳鳴りは、激しさを増してきました。

まるで、サリーの心臓の音のようにドクドクドクと。

空気は、変な毒素のようなにおいで、息をするのもやっとです。

 

ーこれ以上いると、きみには危険だから、もう戻った方がいいな。

 

 

パッと、目の前が真っ暗になり、気が付くとバスの席に座っていました。

黒いマインドは、隣に座っています。優しい目でじっとサリーをみつめていました。

 

ー今まで、我々の時代を救うために、過去の出来事を調べていたんだよ。

私が来たのは、そういうことなんだ。もう、最後の賭けなんだ。

 

ー悪い心が支配している、我々の時代を救えるのは、人間の尊い良い心なんだ。

だから良い心を我々に分けてもらいたいんだ。そして、この袋に入れて持って帰るつもりだ。

良い心は、減ることはないんだよ。増えるんだ。どんどん増える。

マインドに、もう一度、良い心を持たせたいんだ。優しい心を取り戻すために。

そうすれば、またいい時代が築けるかもしれないだろう?

 

黒いマインドは、大きな透明の袋を広げて見せてくれました。ほんの2~3こ、きらきらと輝く玉が、入っていました。

とても美しい玉でした。

 

ーこれから、良い心をたくさん集めにいくつもりだ。

きみには、良い心と、悪い心を見分ける力があるんだよ。

だから、力を貸してくれるかい?

 

ーはい、もちろん。

 

サリーは、そう呟いて、目を開けると、黒いマインドはもうそこにはいませんでした。

隣の席の女の子は、テスト用の本を静かに読んでいます。

 

ああ、今日、テストがあったんだ。

 

急に、思い出しました。

バスは、いつもの道を進んでいます。

子供たちは、いつもの通り、おしゃべりをしたり、本を読んだりしています。

 

では、なにを、どう始めたらいいんでしょう。

サリーには、何も、わかりませんが、なぜか大きくうなづいていました。

 

とても、不思議な体験でした。

サリーの耳鳴りは、すっかり治っています。

 

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フィクションです。

それでは、Saludos!!!

 

 

 

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