青い空の小さな町。
耳鳴りがすると、何かが起こる、という、ある少女のお話です。
サリーという名前の少女は、学校でいつも一人ぼっちでした。
ある日、サリーはクラスメートに仲間外れにされて、学校を飛び出してしまいました。
みんないなくなってしまえばいい。
歩いて歩いて、うんと遠くに行きたい。
こんな学校、こんな町、もういや。
サリーがプンプン怒りながら、石を蹴っ飛ばして歩いていると、
一人のおじいさんが近づいてきました。
何かあったのかい?
いや何も言わんでいいよ。顔を見たら全部わかるから。
そうだな、そんな時は、少し旅に出て面白いものを見てくるといいよ。
そういって、サリーの頭をポンポンと優しくたたきました。
その時、サリーはその心地よさに思わず目をつぶってしまいました。
甘ーいアプリコットの匂いがしました。
突然、頭がくらくらしました。
ただ耳鳴りがひどくて頭を覆ってしまったほど。
い、痛い!み、み、みみが。。。。。。
ようやく耳鳴りが収まって目を開けると、目の前の風景が前と違っています。
砂嵐のような風が吹いていて、一面灰色の景色しか見えません。
ただ、向こうの砂漠の中に、工場のような大きな建物が見えます。
道を間違えるはずないのにと思い、誰か人を探しましたが誰もいません。
その工場のそばに行ってみましたが、音もなければ誰かの声もしない。。。
窓からそおっと工場をのぞくと、たくさんの白い服を着た人が何かを食べています。
ガツガツ、むしゃむしゃ、ばりばり、夢中で食べ続けています。
何かと思ってみたら、大きな銀のさらの上に真っ黒な玉のようなものが乗っていました。それを次々にほおばっています。
いったい何を食べているんだろう?
変なところにきてしまったかなと、少し恐くなってきて、声を出してみました。
「あのうー、こんにちは。」
すると、一斉に、真っ白い髪の、真っ白い肌の人たちが、サリーを見つめてきました。全員が、食べるのをやめて、一斉に振り向いたのです。
「だれだーーー?ここは子供の来るところではないはずだぞ。」
何人かが話をしています。
「おい、どうする?生きてる子がやってきたぞ。」
「捕まえて食ってしまうか。」
「いや、まだ若すぎるよ。むこうに帰らせよう。」
一人の血の気のない、白髪のおばあさんが出てきて言いました。
「あんた、どうやって来たの?早く帰りなさい。二度とここに来てはいけないよ。ここのことも絶対しゃべったらいけないよ。」
「あのう、ここは何をするところなんですか?」
サリーは、恐る恐る聞いてみました。
「ここはねー、難しい話だけど、簡単に言うと人間の悪さを封じ込めるところなんだ。生きている間に、悪い心がたまってくるだろ。そのまま死んでしまった人たちから、悪い心を取り除いてやっているんだよ。」
「あの銀のお皿に乗ったものが、悪い心。ほら真っ黒だろ?他のやつが食べてしまえば、それで消えてしまうんだよ。」
「なんで、そんなことを?」
「決まってるだろ。新しく生まれ変わるための手続きだよ。人間の心はね、きれいになってやっと生まれ変われるの。」
そして、
「あんたの心には、まだ悪さの心はたまってないようだから、ここに来てはだめ。そろそろ行かないと、帰れなくなるかもしれないよ。」
おばあさんは、また工場の中に戻って行ってしまいました。
すると、突然またアプリコットの甘い匂いが。。。そして激しい耳鳴り。
今度は、耳鳴りに交じってむしゃむしゃ食べる音が聞こえてきて、気持ち悪くなりました。思わず目をつむりじっと我慢をします。もう耳が痛くて何が何だか分からなくなりました。
時間がどのくらいたったのか、さっぱりわかりません。
はっと目を開けると、誰かが優しくサリーの頭をなでています。
あの、おじいさんでした。
気分はどうだね、見てきたかい?
あー、しゃべるなって言われてきたんだな。
わかったわかった。
みんな誰もが悪い心はもっている。
ただそれを取り除かないと、あとあと困るってことだな。
困るんならもともと持たないことだ。
人間は優しい心でできているんだからね。
もう家に帰りなさい。
悪い心をためないようにね。
そう言って、山の方に歩いて行ってしまいました。
とても、不思議な体験でした。
サリーの耳鳴りは、もうすっかり治っています。
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期間限定フィクションです。
それでは、Saludos!!!